こんにちは。
私は訪問看護ステーションで理学療法士として働いています。
日々、訪問リハビリでいろいろなご家庭にお邪魔する中で、「これは多くの方がつまずきやすいな」と感じる“介護の落とし穴”にたくさん出会ってきました。
それは、介護の知識や道具の使い方というよりも、心のクセや思い込み、環境の工夫の不足からくるもので、気づかないうちに介護を大変にしてしまっていることが多いのです。
この記事では、実際に私が関わったご家庭で見つけた“介護の落とし穴”と、そのときお伝えした改善方法を3つのエピソードとして紹介します。
エピソード①:頑張りすぎる長女さんと、お母様のリハビリ停滞

あるご家庭で、70代後半のお母様を介護している50代の長女さんがいらっしゃいました。とても責任感が強く、朝から晩まで身の回りのことをすべてこなしていました。
お母様が「トイレに行きたい」と言えばすぐ抱えて移動し、「着替える」と言えばすべて手伝ってあげる。でもある日、長女さんが私にこんな相談をしてくれました。

リハビリに来てもらってるのに、全然歩けるようにならないんです…
実は、お母様にとっては、頑張り屋の娘さんのサポートが“過保護”になっていたんです。手助けが多すぎて、自分で動く機会がどんどん減っていたのです。
解決法:
お母様には、ベッドの横に手すり付きのポータブルトイレを設置。できる限り「自分で立って歩く」ことを促すようにしました。すると、2週間後には自分でトイレに行けるようになり、長女さんの負担も大幅に軽減!
💡おすすめアイテム:
背もたれとアームレスト付きで立ち上がりがしやすいのと、コンパクトなので狭い部屋でも設置しやすいです。
エピソード②:「今まで転ばなかったから大丈夫」が招いた大事故

ある男性利用者さん(80代)のご自宅に初めて伺ったとき、私は玄関の段差と、ツルツルした廊下の床が気になりました。

今までは転んだことないんですよ〜
でもその2週間後、本当に転倒してしまったのです。幸い大きなケガには至りませんでしたが、これは未然に防げた事故でした。
解決法:
段差部分には簡易スロープを、廊下には滑り止めマットを敷きました。また、トイレや脱衣所にも手すりを設置。環境を整えるだけで、転倒リスクは大きく下がります。
💡おすすめアイテム:
ただ敷くだけという簡単な、介護保険を使わなくても安く対策できます。
エピソード③:一人で抱え込んでいた主婦

ある日、70代のご主人を介護している奥様から電話がありました。

最近、夜も眠れなくて…相談してもいいですか?
詳しく話を伺うと、ご主人の夜間のトイレや着替え、食事の世話、通院…あまりにも多くのことを一人で背負い、精神的にも限界がきていたのです。
でも、ケアマネさんに相談しても、介護保険内だけでは対応が難しいと言われ悩まれていました。
解決法:
訪問のたびに少しずつ話を聞きながら、介護サービスの再調整を提案しました。さらに、介護保険内ではできることに制限があるため、自費で自由度の高い介護サービスがあることをご紹介すると、「こういうのがあったなんて知らなかった」と涙を浮かべていらっしゃいました。
💡おすすめサービス:
専門職が対応してくれて、その人らしい生活に合わせてサポートしてくれます。
まとめ:介護の悩みは「気づけば変えられる」
介護の落とし穴は、知識不足ではなく「いつも通り」の延長線上にあるものがほとんどです。
でも、そこに理学療法士の視点や、ちょっとしたアイテム、外部のサポートを取り入れるだけで、状況はガラッと変わることがあります。
大切なのは、「自分たちだけでなんとかしよう」と思い詰めないこと。
リハビリ職やケアマネジャー、地域包括支援センターなど、使える資源はたくさんあります。
そして、「こんなことで相談していいのかな?」と思ったときこそ、本当に支援が必要なサインなのかもしれません。
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