40〜64歳でALS・パーキンソン病と診断されたら介護保険は使える?特定疾病の申請手順を訪問PTが解説【2026年版】
- 「まだ50代なのに介護保険なんて関係ない、と思っていたら病気になってしまった」
- 「ALS(またはパーキンソン病)と診断されたが、65歳以下でも介護保険が使えるとは知らなかった」
- 「難病と診断された。介護保険と難病の制度、どっちを使えばいいの?」
- 「仕事をしながら介護保険の申請をする時間も余裕もない」
- 「訪問リハビリを希望しているが、医療保険と介護保険どちらで使うのか混乱している」

訪問PTとしてお伝えします。40〜64歳でも「特定疾病」に該当する場合は介護保険が使えます。しかし「65歳以下は介護保険と関係ない」と思い込み、利用できる制度を知らないまま家族だけで介護を抱えるケースを現場で多く見てきました。この記事では、難病と診断された40〜64歳(第2号被保険者)が介護保険を使うための全手順を、訪問PTの視点で解説します。
40〜64歳で難病と診断されたら、今すぐ確認すべき3つのこと
- 自分の病名が「特定疾病16疾患」に含まれるかを確認する(ALS・パーキンソン病・SCAは含まれる)
- 主治医に「介護保険の申請のために特定疾病の診断を証明してほしい」と伝える
- 市区町村の介護保険担当窓口または地域包括支援センターに申請する
【データで見る:若年発症の難病と介護の実態】
- 「介護保険の第2号被保険者(40〜64歳)で要介護認定を受けた人は約14万人」(厚生労働省 介護保険事業状況報告) ▶ 出典:厚生労働省
- 「パーキンソン病の平均発症年齢は60歳前後だが、40〜50代での発症も増加している」(難病情報センター) ▶ 出典:難病情報センター
- 「ALSの平均発症年齢は60〜70代だが、40代発症は進行が速いケースが多い」(国立病院機構) ▶ 出典:難病情報センター(ALS)
- 「ワーキングケアラーの88%が仕事と介護の両立に不安を感じている」(日本ケアラー連盟 2024年調査) ▶ 出典:日本ケアラー連盟(PDF)
1. 40〜64歳でも介護保険が使える「特定疾病」とは?16疾患一覧

介護保険の対象者は、原則として65歳以上(第1号被保険者)です。しかし、例外として40歳〜64歳(第2号被保険者)であっても、国が定めた「特定疾病(16疾患)」に該当し、その病気が原因で要介護状態になった場合は、要介護認定を受けて介護保険サービスを利用することができます。
40〜64歳の方が介護保険を使えることをご存じない家族が非常に多いです。診断を受けた日からすぐに申請できますので、まず窓口に相談することが重要です。進行性の難病では、この初動の速さがその後の生活を大きく左右します。

【特定疾病16疾患の一覧表】
| 疾患名 | 難病指定 | このサイトの関連記事 |
|---|---|---|
| 筋萎縮性側索硬化症(ALS) | ✅ 指定難病 | ALS在宅介護ガイド |
| パーキンソン病(進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症含む) | ✅ 指定難病 | パーキンソン転倒予防 |
| 脊髄小脳変性症(SCA) | ✅ 指定難病 | 退院前チェックリスト |
| 多系統萎縮症 | ✅ 指定難病 | – |
| がん(末期) | – | – |
| 関節リウマチ | – | – |
| 後縦靱帯骨化症 | ✅ 指定難病 | – |
| 初老期における認知症 | – | – |
| 脊柱管狭窄症 | – | – |
| 早老症 | ✅ 指定難病 | – |
| 糖尿病性神経障害・腎症・網膜症 | – | – |
| 脳血管疾患 | – | – |
| 閉塞性動脈硬化症 | – | – |
| 慢性閉塞性肺疾患(COPD) | – | – |
| 骨折を伴う骨粗鬆症 | – | – |
| 両側の膝・股関節の変形性関節症 | – | – |
注意:診断名が特定疾病に該当していても、無条件でサービスが使えるわけではありません。「要介護(または要支援)状態である」と認定される必要があります。主治医の診断書と、市区町村による認定調査の両方が必要です。
2. 65歳以上との申請の違い:第2号被保険者の3つの特徴

40〜64歳の申請(第2号被保険者)は、一般的な65歳以上の申請といくつか異なる点があります。
特徴①:「特定疾病によるもの」という証明が必要
65歳以上は「加齢による衰え」など何らかの要介護状態であれば申請できますが、40〜64歳は「特定疾病が原因で要介護状態になった」ことの医学的証明が必要です。主治医が作成する意見書に、特定疾病の記載が必須となります。
特徴②:医療保険との関係(保険料はすでに払っている)
「介護保険を申請すると保険料を新しく払わないといけないの?」と心配される方がいますが、40〜64歳の介護保険料は、皆さんが毎月払っている医療保険(健康保険・国民健康保険)に上乗せしてすでに徴収されています。申請時に別途保険料を払う必要はありません。被保険者証(健康保険証)の番号が介護保険にも連携されます。
特徴③:自己負担割合は原則1割(所得によって2〜3割)
サービス利用時の自己負担は、65歳以上と同様に原則1割負担です。ただし、ALSやパーキンソン病などは「難病医療費助成制度」の対象となるため、制度を併用することで医療保険領域の負担をさらに軽減することが可能です。
【現場でよくある誤解】
「40代で介護保険を申請すると、保険料が上がるのでは?」→ 誤りです。介護保険料は医療保険料の中にすでに含まれており、申請したりサービスを利用したりしても保険料が上がることはありません。安心して申請してください。
3. 特定疾病による介護保険申請の手順【ステップ別完全ガイド】

特定疾病による介護保険の申請は、以下のステップで進めます。
Step 1:主治医に「介護保険申請のための診断書」を依頼(2〜4週間前)

まずは主治医に「特定疾病(病名)による要介護状態のため、介護保険の申請をしたい」と明確に伝えます。実際の主治医意見書は市区町村から病院へ直接依頼されますが、事前に主治医に意向を知らせておくことで、特定疾病の記載漏れを防ぎ、意見書の記載精度が上がります。
※入院中に診断を受けた場合は、退院前に申請手続きを始めることを強く推奨します。
Step 2:市区町村の介護保険担当窓口へ申請(または地域包括支援センター経由)

持参物:健康保険証、身分証明書、(すでに持っていれば)難病医療受給者証
ケアマネジャーがまだ決まっていない場合は、地域の「地域包括支援センター」に行けば、申請の代行からケアマネジャーの紹介まで一括で行ってくれます。申請書には必ず「特定疾病名」を明記します。
Step 3:認定調査(自宅または入院中)

市区町村の調査員が自宅(または病院)を訪問し、74項目の能力評価を行います。
【40代特有の注意点】患者本人が「まだ若い」「家族に迷惑をかけたくない」という思いから、実力以上に頑張って『できる』と答えてしまう傾向があります。これでは要介護度が低く出てしまいます。
最も状態が悪い日(ALSなら疲労時、パーキンソンならオフタイム)の状況を、ありのままに伝えてください。
【調査員への対応のコツ】
40〜64歳の方は特に、調査員に対して『若いから大丈夫』という印象を与えないよう注意が必要です。普段の介護の大変さを、「1日に何回吸引が必要か」「夜間に何回体位変換で起きるか」など、具体的な数字で記録し伝えてください。
Step 4:結果通知・ケアプラン作成

通常30日以内に結果(要介護度)が通知されます。要介護1〜5であればケアマネジャーがケアプランを作成し、サービス利用が開始できます。要支援1〜2の場合は、地域包括支援センターが担当します。
Step 5:訪問リハビリ(PT)の手配

ケアプランに訪問リハビリを組み込んでもらいます。40〜64歳はまだ体力があり、機能維持の可能性が高いため、早期の訪問PTの介入が病気の進行遅延や生活の質(QOL)維持に非常に重要です。
▶ 難病患者の退院前チェックリスト(退院前の申請タイミングについて)はこちら
4. 40〜64歳特有の落とし穴:訪問PTが現場で見た3つの失敗
現役世代ならではの事情により、手続きが遅れたり制度を誤解したりするケースが多発しています。

失敗①:「仕事が忙しくて申請を後回しにした」
40〜64歳は働き盛りの現役世代です。診断後も仕事を続けながら申請手続きを行う必要があるため、忙しさで後回しになることがあります。しかし、特にALSは進行が速く、申請を3か月遅らせるだけで必要なサービス(電動ベッドやヘルパー)が間に合わなくなる場合があります。
対策:診断を受けた週中に、地域包括支援センターに電話だけでも入れてください。実際の申請手続きはケアマネジャーやMSW(医療ソーシャルワーカー)に代行依頼が可能です。
失敗②:「医療保険でリハビリを受けているから介護保険は必要ない」と思い込んだ
医療機関でのリハビリ(外来や入院)と、在宅での訪問リハビリ(介護保険)は役割が異なります。自宅のトイレへの動線確認、手すりの位置調整、家族への安全な介護技術指導は、自宅に訪問するPTにしかできません。
※外来リハビリと訪問PTをうまく使い分けることで、病院での機能訓練と自宅での安全な生活の両方を支えることができます。
失敗③:「難病医療費助成があるから介護保険は二重申請になると思った」
「難病医療費助成(医療費の自己負担軽減)」と「介護保険(介護サービスの費用軽減)」は全く別の制度です。どちらか片方しか使えないわけではなく、両方を申請することで「二重の恩恵」を受けることができます。
5. 医療保険・難病医療費助成との「賢い組み合わせ方」

40〜64歳の方が経済的負担を減らすためには、複数の制度を組み合わせることが不可欠です。
| 制度 | 対象 | 自己負担 | 介護保険との関係 |
|---|---|---|---|
| 介護保険(第2号被保険者) | 特定疾病で要介護状態の40〜64歳 | 原則1割 | メインの在宅ケア費用をカバー |
| 難病医療費助成 | 指定難病338疾患 | 月0〜3万円上限 | 医療費のみ対象。介護保険と別に使える |
| 高額療養費制度 | 全員 | 月上限あり(所得別) | 難病医療費助成と重複適用で更に軽減 |
| 重度訪問介護(障害者総合支援法) | ALS等重度難病 | 1割 | 介護保険の上限を超えた長時間のケア部分をカバー |
| 介護休業給付(雇用保険) | 家族の介護のための休業 | 賃金の67% | 40〜64歳が介護で仕事を休む際に活用 |
40〜64歳特有のポイント:介護休業給付の活用
介護休業給付(雇用保険)を活用することで、仕事を休みながら介護保険の申請手続きや在宅介護の環境準備に専念できます。対象家族1人につき通算93日まで、最大3回に分けて取得可能です。退院直後や病状急変時にこれを使うのが最も賢い選択です。
▶ 介護保険の要介護度が実態より低く出た場合の対処法はこちら
6. 40〜64歳が使えるサービス・制度一覧
介護保険の認定が下りると、以下のサービスが原則1割負担で利用できるようになります。
| サービス名 | 内容 | 費用 | 40〜64歳での利用 |
|---|---|---|---|
| 訪問リハビリ(PT・OT) | 自宅での機能維持・介護技術指導 | 1〜3割 | ✅ 介護保険で利用可 |
| 訪問看護(24時間対応) | 医療的ケア・緊急対応 | 1〜3割 | ✅ 医療・介護保険 |
| 訪問介護(ヘルパー) | 身体介護・入浴・排泄・生活援助 | 1〜3割 | ✅ 介護保険で利用可 |
| 重度訪問介護 | 長時間の一体的ケア(ALS等) | 1割 | ✅ 障害者総合支援法 |
| 通所リハビリ(デイケア) | 施設でのリハビリ・社会参加 | 1〜3割 | ✅ 介護保険で利用可 |
| ショートステイ | 施設への短期入所(家族のレスパイト) | 1〜3割 | ✅ 介護保険で利用可 |
| 福祉用具レンタル | 介護ベッド・歩行器・車椅子等 | 1〜3割 | ✅ 要介護2以上 |
| 難病相談支援センター | 専門家による制度相談・ピアサポート | 無料 | ✅ 全国に設置 |
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7. よくある質問(FAQ)

40歳未満の場合、特定疾病の規定が適用されないため介護保険は使えません。ただし、障害者総合支援法によるサービス(重度訪問介護・居宅介護など)が適用できるケースがあります。すぐにお住まいの市区町村の障害福祉窓口にご相談ください。
申請書の提出は郵送や代理人(ケアマネジャーなど)でも可能です。ただし認定調査は自宅訪問のため、平日の半日程度は同席する必要があります。事前調整で土日や夕方に対応してくれる調査員もいますので、まずは窓口に相談してください。
市区町村から申請情報が職場に通知されることはありません。介護休業を取得する場合は職場への申告が必要ですが、介護保険の申請自体は個人の手続きとして進められます。
原則として、医療保険での外来リハビリと介護保険の訪問リハビリは、同じ疾患に対して同時に利用することはできません。主治医やケアマネジャーと相談して、どちらが今の生活により効果的かを判断してください。訪問PTは自宅環境での直接的な指導ができるという強みがあります。
ヤール分類(重症度)は要介護度と直接対応しているわけではありませんが、ヤール3度では要介護1〜2がひとつの目安です。ただし、オフタイムの頻度や夜間介護の必要性によっては要介護3以上になることもあります。認定調査で実際の状態を正確に伝えることが重要です。
医療保険が変わっても、特定疾病であれば引き続き介護保険の第2号被保険者として利用できます。転職や退職の際はケアマネジャーに伝え、保険証の切り替え手続きに漏れがないよう確認してください。
8. まとめ

40〜64歳での診断は、すぐに動くことが最大の対策です
- ALS・パーキンソン病・SCAは「特定疾病」として40〜64歳でも介護保険が使える。
- 申請の流れは65歳以上とほぼ同じだが、「特定疾病が原因であることの証明」が追加で必要。
- 保険料は医療保険にすでに含まれており、申請によって変わることはない。
- 医療保険・難病医療費助成・介護休業給付を組み合わせれば経済的負担を最大限軽減できる。
- 診断を受けたら、一人で抱え込まずすぐに地域包括支援センターに相談を。
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