こんにちは。
私は訪問看護ステーションで理学療法士として働いています。
この記事では、ある訪問先での出来事から、「転倒リスク」について改めて考えたことをお伝えします。
きっと参考になるので自分の家族のことと照らし合わせながら読んでみてください。
転倒のきっかけは“慣れた場所”にあった

その日訪問したのは、一人暮らしの80代女性・Yさんのお宅。
「この前、ちょっと転んじゃってね」と話されていたので気になって詳しく聞くと——
「夜中にトイレに行こうと思って廊下に出たら、足元が見えなくてね。ちょっとつまずいちゃったのよ」
普段はしっかりしているYさん。日中の歩行も問題なく、転倒のイメージはなかったのですが、「夜間」「暗い廊下」「急いでトイレ」という条件が重なり、転倒してしまったのです。
場所別チェックリストと具体的対策
家の中には転倒のリスクが潜んでいる場所がたくさんあります。
そこで、転倒の多い場所とそのチェックリスト&具体的対策を解説します。
1. 【玄関】段差と靴の散乱に注意
Yさん宅でも、靴がいくつも出しっぱなしになっていて、つまずきやすくなっていました。
また、玄関の段差には手すりがなく、出入りが不安定に。
- 玄関の段差は高くない?
- 靴はきちんと揃っている?
- 手すりはある?
おすすめ対策:
玄関の上がり框が高いときに段差を2段にして1段の高さを低くすることで、体への負担がかなり軽減します。また、手すりもついているため転倒のリスクを大幅に軽減できるのでおすすめです。
2. 【廊下】夜間の“見えない”が危険
Yさんが転倒したのも、まさにこのパターン。
「廊下が真っ暗で、目が慣れる前につまずいた」とのこと。
- 廊下に常夜灯や足元灯はある?
- 物が置きっぱなしになっていない?
おすすめ対策:
廊下の電気をつけるとまぶしく目がさえてしまうため、足元周辺の明るさだけがほしいと感じる人は多いです。
このライトであれば足元や手すり近くに動線に沿っていくつか設置することで、安心して夜間に歩くことができます。
夜のトイレの移動が心配という人には必ず提案しているアイテムです。
夜間のトイレに恐怖心や不安感がある人はコチラの記事がオススメです。
→夜間のトイレ、どう対策すればいい?訪問リハの視点から解説
3. 【トイレ】立ち座りの不安定さをカバー
「和式でふらついた」と話される方も少なくありません。
Yさん宅は洋式でしたが、立ち上がるときにぐらっとする場面がありました。
- 手すりや補助具はある?
- 便座の高さは合ってる?
おすすめ対策:
加齢とともに足の力が衰えていくのは当たり前です。鍛えようとしてもすぐには筋力が高まるわけではありません。そんな時は腕の力を使えばいいんです。置き型の手すりなので、トイレに置くだけですぐ使えて立ち上がりの不安が即解消されます。
4. 【リビング】くつろぎ空間にも落とし穴
Yさんのリビングには新聞や雑誌の束があり、足元が見えづらくなっていました。
また、ソファが深くて立ち上がるのに苦労していた様子も…。
- 座る場所の高さは合ってる?
- 足元にものが散乱してない?
おすすめ対策:
立ち上がりをサポートしてくれるだけではなく、老化とともに硬くなる股関節の筋肉をストレッチして、筋肉の柔軟性を高め動きを改善してくれます。
5. 【お風呂・脱衣所】滑りやすく、狭い空間が危険
「浴室で転んで骨折して入院」という話は、決して珍しくありません。
Yさん宅も床がツルツルしており、「冷たくて急いで出ようとすると怖い」とのこと。
- 滑り止めマットは敷いている?
- 浴槽の出入りに手すりがある?
おすすめ対策:
浴槽からの立ち上がりで足を滑らし、おぼれてしまう高齢者は少なくありません。まずは足元を安定させることをおすすめします。
浴槽マットを敷いてもまだ不安がある場合や浴槽の跨ぎ動作に不安がある人はコチラの浴槽用手すりがおすすめです。浴槽の縁に手をついて跨ぎ動作をする人もいますが、結構滑るのであまりおすすめできる動作方法ではありません。しっかりと滑り止めがついている手すりを設置して、安定した動作ができるようにしましょう。
最後に|「自分の家でも転ぶかもしれない」を前提に
転倒は「よその話」ではありません。
訪問していて感じるのは、「慣れている場所こそ、気をつける必要がある」ということ。
Yさんも、廊下に小さなLEDライトをつけただけで「安心して歩けるようになった」と喜ばれていました。
「転ばぬ先のチェックリスト」、ぜひご家族と一緒に活用してみてくださいね。
そして、必要な福祉用具は我慢せず、導入してみることをおすすめします。生活がきっと楽になりますよ。
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