はじめに:お風呂は癒し?それともリスク?

こんにちは。私は訪問看護ステーションで理学療法士として働いています。
日々、高齢の利用者様のご自宅を訪問する中で、「お風呂での転倒」や「ヒートショックによる体調悪化」を何度も目の当たりにしてきました。
中には「お風呂が怖くて入れなくなった」と話す方もいらっしゃいます。
そんな方々を支える立場として、“自宅で安全に入浴できる環境づくり”の重要性を感じています。
入浴時のリスクとは?

高齢者にとってお風呂は、
- 滑りやすい床での転倒
- 浴室と脱衣所の寒暖差によるヒートショック
- 長時間の入浴による脱水や失神
といった複数のリスクが重なる場所です。
特に冬場は注意が必要で、救急搬送の要因にもなります。
でも、「怖いから入らない」では、衛生面や生活の質(QOL)にも影響が出てしまいます。
理学療法士の視点から見た、安全に入浴するための工夫

1. 脱衣所と浴室の温度を整える
寒暖差によるヒートショックは、実際に脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすことがあります。
私がご家庭でよくおすすめしているのが、コンパクトな脱衣所ヒーターの導入です。
事前に脱衣所を温めておくことで寒暖差によるヒートショックを予防することができます。
また、入浴前に数分間シャワーで浴室を温める習慣も効果的です。
2. 滑りやすい床に対策を
訪問先でも「お風呂場で転んで骨折した」とお話しされる方は少なくありません。
簡単に取り入れられて効果があるのが、滑り止めバスマットと手すり付きバスチェアです。
足を置いた瞬間から安心感が違います。
「立ち座りがラクになった」と評判の定番アイテムです。
3. 見守りと声かけの工夫
一人暮らしや日中独居の方の場合、入浴中の異変に気づけないケースもあります。
最近は、入浴時間の異常を感知して通知する「見守りアラーム」も登場しています。
実際、家族が外出中でもスマホ通知で異常に気づけた事例があり、「導入してよかった」と声をいただいています。
また、入浴前に「今から入ります」と家族に声をかけるだけでも、安全性は大きく変わります。
ご家族やケアスタッフにも伝えたいこと
入浴は身体を清潔に保つだけでなく、生活のリズムや精神的な安定にも大きな役割を果たします。
私たち理学療法士は、日々の機能訓練だけでなく、こうした生活環境の改善提案も含めて、利用者様の生活全体を支える立場にあります。
「ちょっとした道具の工夫で、こんなに安心できるんですね」
という声は、私たちにとっても励みです。
まとめ:入浴を「安全な楽しみ」に変えていくために
高齢になっても、自宅で気持ちよくお風呂に入れるということは、生活の質に直結します。
ちょっとした備えと道具の活用で、事故のリスクは大きく減らせるのです。
ぜひご家庭での安全対策の参考にしていただければ嬉しいです。
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